Premium chefs of Kumamoto

JPEN

ただの自然ではない。「五木の自然」を味わう
渓流ヴィラ ITSUKI / 椎葉 清

Prolougue

Story1 自然に囲まれて過ごすことの本当の意味を知る

熊本と鹿児島、宮崎3県の県境に位置する球磨郡。人々は清らかな川、そして自然と共に暮らしてきた。その中でもさらに山深くにある五木村は、人口1000名ほどの小さな村。標高1000メートル以上の山脈に囲まれ、五木小川・川辺川の2つの河川によって深い渓谷が刻まれている。

清流を眺めながら車を走らせていると、民家もなくなり少々不安になるが、視界が一気に開けた谷あいに「渓流ヴィラITSUKI」はある。

驚くことに、村の94%が森林という五木村。「渓流ヴィラITSUKI」はかつての集落跡地に2019年にオープンしたヴィラリゾート。「水質が最も良好な河川」として16年連続で日本一に選ばれた川辺川沿いに佇み、川辺ブルーと呼ばれる美しい清流を眺めながら静かな時間を過ごすことの出来る場所だ。

「6棟のヴィラは、かつての集落の地名からいただき、この建物は五木の人々が通い、思い出の詰まった小学校をイメージしてデザイン。五木の木材を中心に使い、ここにしかない宿泊施設になっています」。ここで腕をふるう料理長の椎葉さんは、感慨深く施設を眺める。

椎葉さんも同じ球磨郡湯前町の出身。「渓流ヴィラITSUKI」の環境と同じように自然に囲まれて育った。食に携わる家族の影響もあり幼い頃から料理をすることが日常。中学生の頃には料理の道へ進むことを具体的に考えるようになったという。

大阪の調理専門学校へ進学すると洋食を選択。「田舎で育ったので洋食って憧れだったんです」と笑う椎葉さん。「素材の持ち味を引き出し、熱々の料理を食べていただきたい。ダイナミックな調理といえばイタリア料理だと思い修業を始めたんです」。

帰省して受けた衝撃は、「生まれ育った故郷が素晴らしい食材の宝庫だったこと」だと教えてくれた。黒豚や鹿、シイタケ、くねぶなど椎葉さんを驚かせた食材が次々と出てくる。それについてはプレミアムコースの紹介と共にお話しよう。

「渓流ヴィラITSUKI」の厨房に立つようになり、椎葉さんの人吉球磨・五木への想いはより強くなる。「人吉球磨の食材を味わって、知ってほしい」。これが、料理人としての芯になっていった。

「私が人吉球磨・五木の食材に惹かれるのは自然の流れ。生まれた時から身近にあったものなので安心して使えるんです。ただ、私の知識は100%ではないので自分で仕入れに行き、業者の方々との会話を大切にし新しい食材との出会いを日々追い求めています」。

椎葉さんの料理を通して出会う食材は食す人間にとっては1食。ほんの一部にすぎない。長い人生の中の1食にどれだけのインパクトを残すか。だからこそ、その1食1食に魂を込め、人吉球磨・五木の食の素晴らしさを伝えることに椎葉さんは使命感を燃やしている。

穏やかに流れる川辺川の流れとは裏腹に椎葉さんの想いをダイレクトに詰めこんだワイルドな料理の数々。どんな食の旅が始まるか楽しみだ。

Story2  旅の起点になるように。願いを込めた、野趣あふれる料理。

「渓流ヴィラITSUKI」は五木の風土を大切にラグジュアリーとワイルドを同時に体験できるリゾートヴィラとしてオープンした。

宿泊するヴィラは五木村の94%を占める森の恩恵を随所に感じることができる。それはフロント、ウエイティングスペース、客室…に至る。採用している「葉枯らし乾燥材」は伐採後、自然乾燥させたもの。こうすることで衝撃を吸収し調湿効果と集中力を高める効果があると言われている。

谷あいにあるため日暮れが早い「渓流ヴィラITSUKI」。この場所ならではの過ごし方をはじめよう。

森に囲まれたこちらでの時間は食事の時間にも木の温もりを感じるような心遣いが随所に込められている。

五木で育った桜の木は、農家であり漁師であり木工作家でもある甲佐町「ボシドラ農園」の佐藤直樹さんの手で、美しいカトラリーとして生まれ変わった。

カトラリーは食事の時間をスムーズに、そしてより楽しいものに演出してくれる立役者。しっとりとした手触り、軽さ、見た目の優しさを佐藤さんが実現。感謝の気持ちを込めて椎葉さんも蜜蝋を塗るお手伝いを。

仕上げはスタッフみんなで蜜蝋を塗り込み、愛情を込めた。

箸置きと食事の締めに登場するコーヒーカップは「いつき焼き どんぐり工房」の永尾さん作。五木の土を使った陶器は存在感もやさしく、さりげなくそこにいてくれる。

こうした触れるものからも五木の自然を感じる椎葉さんたちの心遣いは優しく、食事が始まる前から期待が高まる。

最初に登場した食材は五木村清楽地区の農地を整備し、栽培されている原木シイタケ。椎葉さんが帰郷後、驚いた食材の一つだ。

肉厚で香りの高い原木シイタケは、アミューズ「五木産原木椎茸と自家製ボッタルガのサラダ お米のチップス」として。

オーブンで軽くローストし旨味を凝縮したシイタケはボッタルガの塩気と好相性。ワイルドに手で食べるスタイルも五感で自然を感じる演出。

球磨地域の黒豚も、椎葉さんを驚かせた。「まず球磨で黒豚が育てられていることを知りませんでした。試してみると脂身もおいしくて。この魅力を伝えたいと考え、パンチェッタや低温調理で提供することにしました」。

オードブル「球磨産紅あずまのラビオリ 蕪のブルーテと黒豚のパンツェッタ
温菜「球磨産猪のシェリー酒煮」

魚料理「相良産鮎のパン粉焼と球磨産野菜のサラダ」。サラダは、地元農家・古里さんが愛情込めて育てた無農薬野菜。コースの随所に野菜をふんだんに盛り込み、ワイルドでボリューミーながら胃に優しく最後まで楽しめるようにという想いが込められている。

鮎は骨まで食べられるように5時間コンフィされている。箸でカットして食べられるやわらかさにも驚くだろう。

サルサヴェルデのソースは、春には山菜を使って仕上げることも。「スタッフに山菜とりの名人がいて、敷地内はもちろん、さまざまなところから蕗のとうやクレソンなどを探してきてくれるんです」。椎葉さんも春の訪れを心待ちにしているのだ。

五木が誇るブランド食材の一つに、「くねぶ」がある。幻の柑橘と言われ、私たちが普段目にしている「温州みかん」の父親にあたるのだとか。

五木では昔から各家庭で育てられてきた「くねぶ」。

酸味が優しく、皮は苦味が少ないのが特徴。食事の合間に「グラニテ」としていただきながら、食事の後半を待ち望みたい。

先ほど登場した「肉厚で香り高い原木シイタケ」が再び姿を見せる。

椎葉さんがイタリアンを選んだ理由にあった「素材に余計な手を加えず、出来立て熱々をダイレクトに提供したい」。この想いが詰まったメイン料理。ダッチオーブンで提供される「五木産鹿のローストと球磨産黒豚の低温調理+坂元牛の炭火焼」。

五木産の鹿は臭みがなく肉質が良いのは、椎葉さんはもちろん県内のシェフたちの間でも評判。餌と清らかな水が豊富な五木の自然が育んだ結果だろう。

目の前で蓋を開け、ゲスト自らがソースをトッピングして仕上げる。この日のソースは赤ワインをベースにカシスやフォンドヴォー、ブルーベリーなどを煮詰めたもの。肉汁や炭火焼された野菜とマッチし唯一無二の味わいを生む。

食事も終わりの時間を迎えつつある。

デザートの「くねぶのムースとピスタチオのアッフォガード仕立て」はくねぶの特徴を引き出すため外皮のみじん切りを加え、さらにホワイトチョコとピスタチオのソースで温めることで、さらに香りを立てた。

エスプレッソシートの輝きも美しく、食べてしまうのがもったいない…とすら感じてしまうはず。

「いつき焼き どんぐり工房」のコーヒーカップで提供されたコーヒーも五木を想う時間になるだろう。

食事の余韻に浸りながら外を眺めると、すっかり暗くなった夜の景色が広がっているが、「渓流ヴィラITSUKI」での時間は、まだまだ終わらない。

今回登場したプレミアムコースには、客室でのおつまみセットと、球磨焼酎が1ボトルセットで付いてくる。

人吉・球磨にある27蔵元の中、スタッフがセレクトした5蔵元を試飲し、好みの1本を嘉島町「たけみや窯」のぐい呑みと共に部屋に持ち帰ることが出来るのだ。

この日のおつまみは、五木の野菜たっぷりのバーニャカウダ。ペレットストーブに火をいれ、囲まれた自然の声に耳を傾けながら時を気にせず過ごしたい。

関連記事:渓流ヴィラITSUKI 椎葉清セレクト 五木くねぶ

店舗情報

住所:熊本県球磨郡五木村甲2859-7

TEL:0966-29-8055

営業時間:チェックイン15:00/チェックアウト11:00 (定休日なし)

公式HP:https://keiryuvilla.com

プレミアムコースのご予約

プレミアムコースは熊本の四季折々の食を楽しんでいただくために、各店舗の食材で内容が変わります。内容については店舗に直接お尋ねください。

プレミアムSTAY・厳選された食材を使用したワンランク上の特別なグリル料理と渓流STAY

料金:38,000円

予約サイトはこちら

アクセス

Share this article

Galleryフォトギャラリー

Translate »