Premium chefs of Kumamoto

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美味しいは世界共通。料理人の魂を込めた地野菜の創作料理
人吉温泉 あゆの里/ 栗原 健一

Prolougue

contents

Story1 シェフの物語

ただ純粋に求め続ける、お客様の満足

時代は変わり、世界を容易に旅することができるようになった。ここ熊本にも年間101.1万人(※1)の人々が海外から訪れ、たくさんの思い出を紡いでいる。

※1  2023年外国人延べ宿泊者数(出展:観光庁「宿泊旅行統計調査」)

皆さんは、旅をする時、何を重要視するだろうか?ここでご紹介するプレミアムシェフは、日本を訪れる人々に「美味しい」を届けたいと努力を重ねる料理人。日本料理をはじめ、ヴィーガンやハラール、台湾素食(※2)にも対応し、訪れる人を選ばない真の「美味しさ」を求め続けている。

※2「ヴィーガン」動物性食品を食べない食生活を送る人のこと。「ハラール」イスラム教で「許されたもの」を指し、農場から食卓に至るまでの全てのプロセスにおいてハラールであることが義務化されている。例えば、非ハラール製品と隔離した施設で処理加工しているなど。「台湾素食」動物性食材と五葷(ニンニク・ニラ・ネギ・タマネギ・ラッキョウ)を使用しない料理のこと。

その料理人・栗原健一さんが料理長として厨房を任せられているのが、人吉温泉「あゆの里」だ。熊本と鹿児島の県境。一級河川「球磨川」が貫流する人吉球磨で、創業84年を迎える温泉宿。多国籍のスタッフによる細やかなサービスと、人吉球磨の恵みを存分に味わえる食事を提供し、インバウンド客を数多く迎えていることでも知られている。

栗原さんは、和食一筋36年。熊本・植木町で生まれ育ち、熊本県内をはじめ、鹿児島の旅館などを経て「あゆの里」に入社し、14年目を迎える。

「人吉を訪れた時、まずは食材の素晴らしさに感動しました。さらに、豪雨災害によって自然の厳しさを経験し、私たちは、良くも悪くも球磨川の恩恵を受けているのだと強く感じるように。それまでは、山の中の宿なのに海の幸も取り入れていましたが、現在は一新し、『球磨川を食す』をテーマにしたお料理を提供しています」。

水に恵まれ、自然に恵まれた風土は、人吉球磨特有の食材を生み出す。それは訪れないと食べることのできない、貴重な体験につながる。

「ヴィーガンを提供しはじめて5年になります。ここ10年ほどで訪日客が増え、国籍もさまざまに。それは同時に、ヴィーガンやハラールなど、食の多様性が求められてくることを意味します。当時、九州でも対応している宿は少なく、さらに人吉のような地方は皆無。ですが、せっかく選んで当宿においでいただくのですから、温泉やロケーションだけでなく、食事でも満足していただきたい。そう考え、その方々にとっての美味しいとは何だろう?を考え、追求することにしました」。

「そうは言っても、野菜だけを使って料理するヴィーガンには、美味しい食材が欠かせません。さらに、ハラール認証を取得した食肉加工工場『ゼンカイミート』が近くにあったことも、実現できた要因として大きかったですね」。

料理人だけが努力しても、食を生み出す生産者がいないと最高の料理は完成しない。「世界中に人吉ファンをつくる」。「あゆの里」が掲げるビジョンを叶えるため、栗原さんは、大切に育てられた地域の食材に、日々の努力を重ね、世界各国から訪れるお客様のために料理を作り続けているのだ。

Story2  生産者との物語

生産者との物語「呼応する、挑戦心」

老舗旅館の料理長、和食一筋といえば、「職人気質」という言葉が思い浮かぶ。少々、近寄りがたいイメージだが、栗原さんはちょっと違う。料理に関する話をする時、栗原さんは実に楽しそうで、訪れた球磨焼酎の蔵元、鍛冶屋でも、笑顔が途絶えなかった。

蓑毛㊀鍛冶屋」で迎えてくれたのは、8代目の蓑毛裕さん、9代目の稔さん、10代目の勇さんの親子3代。江戸中期から250年以上、昔と変わらない製法で包丁や鎌などを作っている老舗鍛冶屋だ。

栗原さんは柳刃包丁と細工包丁をオーダーしたと言う。「包丁は毎日使うもの。蓑毛さんの包丁は以前から愛用していました。切れ味はもちろん、重量感や持った時のバランスなどがとてもいいので、新調することにしました」と栗原さん。旅館で働く弟子たちにも、包丁をプレゼントしたこともあったそう。

「料理人の方から再注文されるということは、とても自信につながります」と頬をゆるめる稔さん。その向こうでは、90歳の裕さんが炉に火を入れ鋼を打ち始め、勇さんは包丁に名入れを施す。

親子3代、とても仲が良く、抜群のチームワークで伝統を守り続けているようだ。

500年という歴史を持つ球磨焼酎。27ある蔵元の中、訪れた「深野酒造」は200年を超える蔵元だ。

7代目・深野誠一さん、8代目の息子さんをはじめとした家族と共に、未来につながる球磨焼酎を生み出している。

「球磨焼酎は、料理に合うブランドが多いんです。調理の香りづけや、肉を漬け込むとやわらかくジューシーになるなど、料理酒としても使っています」と話す栗原さん。「深野酒造」の「彩葉」「誉の露」といったヴィーガン認定を取得したものもあり、安心してお客様に提供できるのだと言う。

「深野酒造」には完全手作りの常圧焼酎や、樽仕込みのものなどがあり、息子さんたちが生み出したバーボン樽で5年寝かせた樽リキュール「FUKANO2024Edition BOURBONCASK」など、アイデア満載のブランドが数多い。

自身も無類の焼酎好きと話す栗原さんも、「深野酒造」の取り組みに興味津々。話が止まらない。

深野さんも蓑毛さんもまた、職人のイメージとは異なり、とても穏やかな笑顔で迎えてくれる。人吉・球磨の風土が、強い信念とやわらかな人柄を育んでいるのかもしれない。

Story3 プレミアムコース

地野菜の創作料理は、サプライズの連続

最初にお伝えしておきたいことがある。野菜だけでコース料理を作るということは、使う調味料、出汁の一滴でさえ動物性のものが使えないということだ。日本には精進料理という食文化があるが、正直、満足感にはほど遠い。「質素」という言葉がピタリとハマるだろう。

旅と共に味わう料理には、ワクワク感、満足感が欠かせない。それを追い求めたのが、今回のヴィーガンコースだ。

まず、注目したいのが「出汁」。

季節によって材料は変わるが、この日は、ダイコン・ニンジン・ゴボウ・干し椎茸・昆布を使用。大きくカットし、沸騰しすぎないように煮込むことで、それぞれの食材からうま味が溶け出していく。その時間はなんと2時間。一度冷まし、味を落ち着かせて、やっと完成。

この出汁がベースになり、さまざまな料理に使われていく。

「うま味のバランスを考え野菜を選んでいます。正直、美味しいの基準点は次から次へと進化しているので、レシピはあくまで目安。最終的には、自分の舌で感じ、調味料などを調整しています」。

前菜、スープ、揚げ物、煮物、強肴、温物、食事、デザートの8品。一品一品に、料理人の魂が込められており、それはサプライズの連続。正直、ヴィーガンでなくても満足感のある構成になっている。

前菜「人吉の霧景色」

午前中、真っ白な霧に包まれる人吉の景色は有名で、それが年間100日ほど発生するというから驚きだ。その幻想的な景色をイメージして生まれたのが、この野菜のオードブル。

「サラダ感覚で食べていただきたい」と、南瓜のムースや湯葉・パプリカのジュレディル、花びら百合根、梅芋寿司といった、細やかな仕事が施された品々が霧の中から現れてくる。「これは何の野菜でできているんだろう」、食べるたびに訪れるサプライズが楽しい一皿だ。

揚物「季節の野菜の天婦羅」

サクッと軽い衣、筍・菜の花・里芋・蓮根、さらにタマネギ・ニンジン・椎茸のかき揚げ、それぞれの食感も楽しめる天婦羅。これを野菜の出汁でいただくと、口の中いっぱいに食材のうま味が広がっていく。

煮物「菊蕪」

フタを開けた瞬間、艶やかな餡をまとった菊の花が顔を出す。

飾り切りした蕪は、菊の花に見立てられ、見目麗しい姿に。とろみのある出汁に舞う花びらも美しく、ゲストがフタを開けるその時も予測して作られた一品だ。箸で崩れるほど丁寧に煮た蕪は、ジュワッとうま味が溶け出し、それは口福そのもの。

強肴「熊本丸茄子の飛龍頭」

強肴とは、会席料理の中に登場する「酒のアテ」を意味する。焼酎好きな栗原さんの名刺代わりの逸品だ。

丸丸とした茄子と飛龍頭をつまみに、球磨焼酎と併せていただきたい。

温物「人吉の野菜鍋」

余すことなく出汁を味わうには鍋が最適。筍・白菜・春菊をはじめ、人吉球磨が世界に誇るスーパーフード「たもぎ茸」も味わえる。そんなラインナップの中、トマトが並んでいるが、これも栗原さんのサプライズな提案。「出汁とトマトは意外と合うんです」。この言葉を信じ、ぜひ試していただきたい。

食事「彩り寿司」

コース料理も終盤に差し掛かり出てきたのは、野菜寿司。もちろん栗原さん、ただの野菜寿司ではない。彩りの良さは思わず写真を撮りたくなるほどだが、山茶花蕪、筍、菜の花、アボカドサラダに加え、なんとイチゴの軍艦が並んでいる。イチゴと海苔、酢飯のバランス…、ところがこれもまた、美味しいのだから面白い。

食事の時間はいかがだっただろうか。このプレミアムコースでは、「あゆの里」が誇るスイートルームが用意されている。

自家源泉の露天風呂も球磨川に面したオーシャンリバー。自分だけの良泉を堪能し、変わりゆく景色をのんびりと楽しんでいただきたい。

ここでご紹介した料理はほんの一例。料理人は、毎日、厨房に立ち、包丁を握り、食材と対話し、その積み重ねで技術を磨き続ける。それは終わりのない追求。常に進化を続ける栗原流ヴィーガンは、訪れるゲストの満足を追求し、今日も進化し続けている。

店舗情報

住所:熊本県人吉市九日町30

TEL:0966-22-2171

営業時間:チェックイン15:00、アウト10:00

定休日:なし

公式HP:https://www.ayunosato.jp

プレミアムコースのご予約

プレミアムコースは熊本の四季折々の食を楽しんでいただくために、各店舗の食材で内容が変わります。内容については店舗に直接お尋ねください。

プレミアムヴィーガンコース 

料金:20,900円〜(1泊2食付)

予約方法:専用サイト(対応言語:英語)

予約サイトはこちら

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