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ふるさと・南阿蘇への愛を体現
山小屋Holahoo / 小山 鉄平

Prolougue

Story1 新しい食の発見は宝探し。進化するオーベルジュ

世界農業遺産に認定された阿蘇地域。阿蘇五岳の一つ、中岳は今なお活動を続ける火山。活動が穏やかな時には、火口まで見学することもできる世界有数の観光地だ。

日本最大級の草原に牛が放たれ、あちらこちらで草をはむ牛の姿が、のどかな景色をつくりだしている。人と自然が共存し、現在に残す四季折々の美しい姿。これこそが、阿蘇の魅力の一つ。

その南に位置する南阿蘇に、木立に囲まれ、ひっそりと佇む一軒のオーベルジュ「山小屋Holahoo」がある。ドイツ語で「ヤッホー」を意味する店名からも伝わるように、こちらのご主人は無類の山好き。近頃は、ちょっと忙しくなり、登山もお休みしているようだが、訪れたらぜひ阿蘇の山々の魅力を聞いてほしい。

「山小屋Holahoo」のご主人の名は小山鉄平さん。ご両親が営んでいたペンション「サンディーベル」を譲り受け、2013年4月から現在の店名を掲げ、新たな時を刻み始めた。レストランやホテルで約14年間修業し身につけたフランス料理の技術を、地域の食材に重ねて提供される料理は評判を呼び、「料理が美味しいペンション」として広がっていった。そうして年月が流れた2021年、小山夫妻はあることを決意する。

それが、オーベルジュとしての進化だ。その名を語る以上、主役は「料理」となる。決して、手抜きはできない。「できるだけ南阿蘇の食材を使いたいと思っていますし、風土を生かした料理の方が、無理がないんです」と語る小山さん。

人と人がつながり、新しい食材と出会い、生まれる料理。それが、「山小屋Holahoo」小山鉄平さんの料理。彼がつむぐ食の旅は、雄大な阿蘇が育む食の物語なのだ。

Story2 シェフが出会った南阿蘇が育む食。そして、つむぐ食の物語。

「山小屋Holahoo」の食事のスタートは18時半。
暖炉に火が灯り、食事の時間が始まる。

炎のゆらぎ、小山さんの調理をする姿を眺めながら、食の旅へ出かけよう。

水蒸気噴火を続けている中岳。活火山を共にした生活が当たり前の南阿蘇にふさわしい「阿蘇の景色を表現した」ショープレートを。小山さんは、阿蘇市にある「山陶園」の山下さんに望みを伝えた。暖炉の炎、その火を活用して調理される薪火料理。その料理たちを魅せるプレート。

山下さんは、土から自身で集めて器づくりを行う陶芸家。火山灰や溶岩を使ったものなど、阿蘇でしか完成しない器を作り上げる。

生まれたのは、これまで山下さんが集めてきた阿蘇の多種多様な土を使って焼き上げた「ボルケーノプレート」

細かなヒビが入り、ゴツゴツとした手触り。荒々しさと野生味を感じるプレートだ。

その上には、これから始まるプレミアムな時間を共にするメニューが記されている。

ふと隣に目を移すと、カトラリーの中に「阿蘇南郷檜」の箸が並んでいる。これもまた、プレミアムコースのために生まれたもの。

阿蘇・高森地方で古くから植えられてきた「阿蘇南郷檜」は、「阿蘇高森神社」の御神木のDNAを持つとも言われている貴重な高級材。

すっと空に向かって伸びる「阿蘇南郷檜」は、触れているだけでも神聖な気持ちになるよう。

日本での食事に欠かせない箸もまた、阿蘇の歴史と恩恵を受けたものを用いた。

野菜などをペースト状にした11種類のソースを用いた見目麗しい一皿。前菜3種に続き提供される「季節野菜の菜園風」

「ここは誰にも教えたくないんです。内緒ですよ」。そう言って先導する小山さんの後ろ姿は、無邪気な少年のよう。

小山さんは、食の話をする時、こんな少年のような仕草を見せることがある。

案内されてたどり着いたのは、青々と草花が茂る湧水地。ズボンの裾をめくり、袖を捲り上げ、躊躇なく水の中に入っていく。「ここはクレソンが自生していて、一年中収穫できるんです。成長段階もさまざまなので、その日の料理に欲しいクレソンを収穫することができるんです」。

南阿蘇は、「日本名水百選」に選定された湧水があちらこちらにある水に恵まれた地域。「水をコンセプトにメニュー構成を心がけています。南阿蘇の水からは“底力”を感じるんです」。小山さんは、毎日のように、湧水を汲みに行き、料理に使っているという。

硬度の異なる湧水が点在する南阿蘇の地の利を活かし、スープには軟水を。フォンドヴォーなどには硬水を使用。そんな贅沢な使い分けができるのだ。

そうして生まれたプレミアムコースの一つが、「鹿肉のコンソメ ロワイヤル仕立て」。

黄金色に輝くスープは、メイン料理に使用する鹿肉の不要な部位を6〜7時間炊き込んだもの。命を無駄にせず、しっかりと料理に昇華させる、小山さんの愛を感じる一品。下の茶碗蒸しと一緒にいただく。

成長段階によって味わいが異なるクレソンは、この日は「奥阿蘇鱒のファルシ クレソンのソース」に。

湧水で育った鱒と、クレソンのほろ苦さがあいまった一品として提供された。

暖炉では、炎が熾火になり、あか牛と鹿肉、野菜が焼かれている。その様子はまるで小山さんの料理ショー。

次の料理が運ばれてくるまでの高揚感もまた、愉しい時間ということ。

薪にくぬぎを使用。この燻香もまた、味わいの一つ。「薪焼き あか牛リブロース 鹿肉」の鹿肉は手で豪快にいただく

「山小屋Holahoo」から車を20分ほど走らせた高森町に、「阿蘇の酒れいざん 山村酒造」がある。寒い冬の朝、仕込みが行われ、旨い酒が完成するのだ。

小山さんは、酒を絞った後の酒粕に注目。生まれたのが、「阿蘇霊山酒粕のアイスクリーム 柑橘のグラニテ」だ。

口いっぱいに広がる酒の香り、フルーツのような甘味も感じる。さらに訪れる、柑橘の爽やかさ。一緒に添えられた「れいざん」の熱燗も、もちろん相性抜群。

プレミアムコースの最後を飾るのは、特別に「asoうぶやまキュッフェ」「ふぁとりあin産山」「organ」の3者からなるチームで製作しているボタニカルティー。

自家農園で育てた無農薬のハーブを手積みし、乾燥させ、ブーケのように仕上げたもので、見た目の可愛さもお気に入りのポイントだと話す。

お湯を注ぎ、じっくりと待つ間も楽しく、口に含むと、さまざまな香りと味わいが広がる。その余韻に浸りながら、夜が更けていく。

「山小屋Holahoo」のプレミアムコースには、翌朝の朝食と、チェックアウト後のランチバスケットも付いてくる、1泊3食のプランだ。ご紹介したのは、ある冬の日のコース。季節によって、出会によって変わる阿蘇の恵み、小山さんの地元への愛が詰まった料理たちを、余すことなく味わっていただきたい。

自家製ベーコンや地元ベーカリーの天然酵母パンを使った朝食
ランチバスケットを持って、絶景スポットでランチを。受け取り時間や、ランチバスケットを姉妹店のバウムクーヘンのお土産に変更することも可能なので、ご相談を

文 / 今村 ゆきこ  写真 / 野田 和樹

関連記事:山小屋Holahoo小山鉄平セレクト 「aso うぶやまキュッフェ」ボタニカルティー

店舗情報

住所:熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽4635-6

TEL:0967-67-2008※完全予約制

営業時間:チェックイン15:00/チェックアウト10:00

公式HP:https://holahoo.com/

プレミアムコースのご予約

プレミアムコースは熊本の四季折々の食を楽しんでいただくために、各店舗の食材で内容が変わります。内容については店舗に直接お尋ねください。

1泊3食 山の幸のプレミアムコース(ドリンクペアリング ランチバスケット付き)
※ランチバスケットの受け取りは要相談(ランチバスケットをバウムクーヘンのお土産に変更可能)
※中学生以上のお客様に限らせていただきます。
※通常コースは1泊2食21,000円〜

料金:28,000円〜

予約サイトはこちら

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