健やかな野心と熱意。熊本の未知を味わう10皿を
瑠璃庵 / 丸山祥広
「瑠璃庵」は、2022年6月で開店して丸13年を迎える。東京出身の笹原圭悟さんが、2009年に移住し、父と開業した店。ここには真摯な仕事に裏打ちされた、日々進化し続ける料理と酒がある。「選びぬかれた熊本の旬って、こんなに美味しいんだ」。その一瞬を閉じ込めたきらめきに驚きつつ、舌が躍るのは毎度のことだ。
元旅館を改装した店は、上通りアーケードの北、通称「上乃裏通り」の角に凛と建つ。この通りには昔から、味も個性もズバ抜けた飲食店が、狭いエリアにひしめき合っている。流行り廃りが早い今の時勢でも、オープンから現在に至るまで、「瑠璃庵」の人気は不動。時代に流されることなく、時代にあらがうことなく。笹原さんは変わることを恐れず、むしろ楽しんでいる。今では指折りの人気店を経営する素晴らしい料理人やサ ービスマンを数多(あまた)輩出してきた点も、この店の凄さと言えるだろう。
実は笹原さんは、飲食店店主であるとともに生産者でもある。祖父の代から続いた米づくりを受け継ぎ、オープン時から自家栽培米「ミナミニシキ」を育ててきた。2020年1月の大規模 リニューアルを機に改めて見つめなおしたのが、「自分たちでいちから育てる米」の意味。今でこそ指定農家からこだわりの食材を仕入れる店は増えたが、体を動かし、土にふれ、汗をかき… 地道な作業を繰り返して、収穫の喜びを追求し続けてきた 13 年でもあった。「あるもの(畑) を生かし実直に続けてきたことが、気づけばこんなに年月が経っていた」と笹原さんはさらりと言うが、簡単にできることではない。太陽と、水と、土の力を信じ、できる限り自然に育てる米づくり。今はスタッフ一丸となって取り組む愛ある事業となった。
「おいしいものをよりおいしくしたい」。そんな、極めてシンプルな想いから練られた今回のプレミアムコースの主役は、土鍋で炊かれた白ごはんだ。天草の旬魚も、天草大王のレアカツも、菊池源吾牛の薪焼きも。デザートをのぞく8皿すべてが、締めに登場する白ごはんを、最も美味しく味わってもらうための「序章」としたことが、食べ手の創造力をかき立てる。店の雰囲気はもちろん、本格であると同時に温かみがあって親しみやすい。それが居酒屋・「瑠璃庵」の底力だ。感動の高みに登り、最後にお目見えしたメインディッシュを食べ終えて店を出るとき。またあの心地に浸りたいと、次の予約をしたくなる客の気持ちがよくわかる。
店舗情報
住所:〒860-0848 熊本県熊本市中央区南坪井町5−21 2F
TEL:096-352-8174
営業時間:月、水~日、祝日、祝前日: 17:30~23:00 (料理L.O. 22:00 ドリンクL.O. 22:30)
定休日:火
プレミアムコースのご予約
プレミアムコースは熊本の四季折々の食を楽しんでいただくために、各店舗の食材で内容が変わります。内容については店舗に直接お尋ねください。
プレミアムコース
料金:22,000円