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KIJIYA 池田 英光セレクト
「Saigo」菊池源吾牛

「吾が源、菊池にあり」。菊池源吾といえば、この言葉を残した西郷隆盛が、奄美で名乗っていた名前。実母の実家があったとされる菊池市七城町砂田で畜産農業を営む「菊池ユートピア農場」、そして加工販売を行う「Saigo」では、「歴史と共に地域のことを自分たちなりに伝えていきたい」という想いから、自らの牧場で育つA4等級以上の黒毛和牛を“菊池源吾牛”と名付け、2021年春、直販を開始した。

それまで、生産のみを行なっていた増永優樹さん。愛情をかけて育ててはいるものの、自らの牧場で育った黒毛和牛が、出荷後、どこでどう食されているか知ることができず、当然ながら、自分たちで食べたこともなかったという。

また、奥さまの直子さんは、子育てが忙しく、働きに出ていたため現場に入ることがほとんどなかった。そのため、「正直、主人の仕事への熱意が理解できていなかったのですが、子育てがひと段落し、現場に少しずつ入るようになって、その取り組みを素直にスゴイと思い、主人を尊敬するように。主人はもくもくと仕事をするタイプ。これは世に伝えていかないと!と思い、私が発信していこうと思ったんです。そこで、直接販売というかたちを選ぶことを決意しました」。

直子さんを中心に、2021年4月、精肉カット・加工・販売・飲食提供を目的にした「Saigo」を立ち上げ、直接販売を開始した。

「循環型有機農畜産業は、義父の代から続いています。義父が志の高い方で農業法人を設立。社名を農業の楽園という意味から名付け『菊池ユートピア農場』としました。父と息子でこれから未来ある農業を!と思っていた矢先、主人が19歳の頃、すい臓がんで急逝」。当時、牛・ヤギ・米を手がけていて、中でもヤギは沖縄に出荷し、島内で消費するヤギの多くが「菊池ユートピア農場」発のものだったほど。優樹さんの代になってから、牛と米に絞り込み、徐々に有機農業へシフトしていった。

優樹さん率いる「菊池ユートピア農場」では、有機で農作物を育て、有機稲わらや規格外の有機米を牛に食べさせ、その排泄物で有機肥料を作り、有機農作物を育てるという「循環型有機農畜産業」を行なっている。

また、等級を上げるために牛を育てるのではなく、健康的に牛を育てることに努力を重ねている。その中の一つが、飼料にアマニを選択している点。「直販をスタートした頃にご縁が繋がり『九州バイオクラスター推進協議会』に所属されていた『緒方エッグファーム』の社長さんからヘルシーファーミングプロジェクトのお話を聞き、アマニ飼料の取り組みにチャレンジしました」。およそ1年で理想的なオメガ3・オメガ6の含有黄金比バランスを実現。アマニ飼料は、家畜の健康、人の健康、地球の健康に繋がるというフランスですでに実践されてきた取り組みで、安心して食べられて、あっさりとした脂が特徴の美味しい牛肉を叶えたのだ。

最初の一頭が納品された日、スタッフでバーベキューをすると、全員から「うまいっ!」の声が。自分たちが育ててきたものを、自分たちで味わえるという人生初の感動。それは、今まで行ってきた努力の積み重ねが間違っていなかったという確信につながった。

「お肉は美味しい。でも、どうやって販売していこう」。商売の経験もつてもない直子さんはSNSをスタートし、まずは発信する一歩を踏み出した。すると、届いたのが「KIJIYA」池田千晶さんからのDM。牧場を訪れた池田さん夫妻と出会い、自分たちのしてきたことを伝えると、想いを知った上で店で扱ってもらえることになった。「KIJIYAさんで料理をいただきました。シンプルな味付けで美味しいのはもちろん、メニューに『菊池源吾牛』って書いてあったことに感動しました」。この「KIJIYA」をスタートに、熊本をはじめ、福岡・名古屋・三重・東京のレストランなど、取引先が増えていった。

「KIJIYA」で提供される菊池源吾牛のヒレステーキ

「現在、JAに月に8~10頭を出荷する中、菊池源吾牛としてSaigoで販売できているのは1~2頭。菊池源吾牛として本質の価値を共感できる方々に全頭直接お届けできるようになることが目標です」と直子さん。優樹さんも「純粋に牛飼いが好きですし、この仕事は自分の使命だと思っています。今は亡き父に聞けないですが、ユートピアで叶えたかった夢の答え合わせをしながら、日々、牛たちと向き合っています。そして私たちの育てる農畜産物を料理してくださったり、食していただくことは循環型の有機農業に一緒に取り組んでいることになり、地球の環境問題と大きくつながっています。その仲間を一人でも増やせるように、これからも努力していきます」

現在、月に1回、予約優先で直接販売を行っており、県外への冷凍発送も対応。BASEでの通信販売も開始予定。公式LINEに登録するとオープン日などの情報が送られてくるので、ぜひ登録してその時を待ちたい。

店舗情報

Saigo

〈住所〉熊本県菊池市七城町砂田670-1

〈営業日〉月1-2日程度 ※公式LINEにて情報発信中

〈公式HP〉https://saigo-shop.com

〈公式SNS〉Instagram @ https://www.instagram.com/naoko_masunaga/

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